2013年度 第8回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞者発表!

2013年度 第8回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞者発表!
現役リケジョが提案!リケジョ増加のカギとなる「リケジョミクス 3本の矢」発表
―女性研究者が30%に増えることによる経済効果を試算!―

界最大の化粧品会社ロレアルグループ(本社:パリ)の日本法人である日本ロレアル株式会社(本社:東京都   新宿区、代表取締役社長:クラウス・ファスベンダー)は、本日 2013年9月11 日(水)、フランス大使公邸にて、   2013年度 第8 回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者発表および授賞式を実施いたしました。
本年は、新たな試みとして、日本の理系女子への関心を高めるべく、「リケジョミクス 3本の矢」と題して現役リケジョ (理系女子)の声をもとに作成した施策案と日本の“リケジョ”が増えることによる経済効果を発表しました。

① 「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」:
日本の若手女性科学者が、国内の教育・研究機関で研究活動を継続できるよう奨励することを目的として、  2005 年 11 月、日本ロレアルが日本ユネスコ国内委員会との協力のもと創設しました。対象者は、物質科学、生命科学の分野で、博士後期課程に在籍または、博士後期課程に進学する予定の女性科学者で、原則、  物質科学、生命科学からそれぞれ 2 名 (計4名) 決定し、賞状と奨学金 100 万円が贈られます。

当奨励賞は、1998年よりロレアルグループ(本社:パリ)とユネスコ本部が毎年、世界規模で展開している「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の国内賞に位置づけられます。2013年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」においては、日本を代表する科学者黒田 玲子(東京理科大学総合研究機構教授、東京大学名誉教授)が受賞しました。分子構造の左右性の違いが自然界に広く現れる左右性(キラリティー)現象に重要であることを明らかにし、アルツハイマーなどの神経変性疾患研究など幅広い応用 研究にもつなげる多大な貢献を成し遂げました。

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者は下記のとおりです。

■物質科学分野
小原 睦代(おはら むつよ) (26歳) 名古屋工業大学大学院 工学研究科 未来材料創成工学専攻ナノ・ライフ変換科学分野 中村研究室
高山あかり(たかやま あかり) (27歳) 東北大学原子分子材料科学高等研究機構  (2013年4月~) (東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻 光電子固体物性研究室 卒)

■生命科学分野
野殿 英恵(のどの はなえ)  (31歳) 慶應義塾大学 理工学部  (2013年4月~)(慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科 発生・生殖生物学研究室 卒)
松嶋 藻乃(まつしま あやの) (27歳) 北海道大学大学院 医学研究科 特任助教  (2013年4月~)  (北海道大学 医学部 卒)

② 現役リケジョが提案「リケジョミクス 3本の矢」とその経済効果:
主要先進国において日本は女性研究者の割合が13.6%と最下位となっている状況下で、国の政策では女性研究者の割合を30%にあげることを目標とし、様々な取り組みを推進しています。これに対して、“研究室の環境改善”や“ロールモデルが少ない”など現役のリケジョの声をもとに「リケジョミクス 3本の矢」を発表しました。

さらに、関西大学大学院 宮本勝浩教授の協力のもと、「女性研究者が全研究者の30%まで増加することにより、約2,800億円の経済効果がある」という指標を算出しました。現状問題をアベノミクスにかけた施策案と数値で  示すことで、女性科学者を増やすことの重要性や後進育成の意義を訴求していきます。

 

 

2013年度 第8回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」―物質科学分野
 

小原睦代(おはら むつよ) 

  
    ”科学とは挑戦”

出身地:  岡山県岡山市
生年月日:1987年2月25日 (26歳)
所属大学:名古屋工業大学大学院 工学研究科 未来材料創成工学専攻 ナノ・ライフ変換科学分野 中村研究室
研究分野: 有機化学、不斉合成
      
研究歴:(受賞歴、論文掲載など)
【論文掲載】
・S. Nakamura, M. Ohara, Y. Nakamura, N. Shibata, T. Toru, Chem. Eur. J. 2010, 16, 2360.
・M. Ohara, S. Nakamura, N. Shibata, Adv. Synth. Catal. 2011, 353, 3285.
・S. Nakamura, Y. Maeno, M. Ohara, A. Yamamura, Y. Funahashi, N. Shibata, Org. Lett. 2012, 14, 2960.

<社会と研究の接点>
医農薬学、化学工業の発展に貢献

<研究内容>タイトル:酵素を凌駕する触媒創製―新触媒を用いて医薬品分子の右左を作り分ける
医薬品に使われる分子には、鏡像異性体といわれる鏡に映し合わせることはできても重ね合わせることができない分子(右手と左手の関係の分子)が数多く用いられており、このうちの一方の鏡像異性体分子が医薬品の有効成分である例が多くなっています。このため、それらを製造・供給する技術である不斉合成法は、現代の医薬品合成において必要不可欠な技術とされ、不斉合成を効率よく達成するための新しい高機能な触媒創製は、重要な研究分野となっています。

本研究では、生命活動に関わる生化学反応に対して極めて高い活性化能力を示す酵素からヒントを得て、それら酵素中に多く含まれる部分骨格を変化させることにより、分子の表裏を区別できるような酵素を超越する不斉触媒の開発を行いました。本触媒では独自の触媒設計により、二つの部分が協力して働くことが可能となり、効率よく鏡像異性体の一方を優先的に合成することに成功しました。これら新規不斉触媒の利用により、これまで医農薬品 開発において困難とされていた問題を克服できる可能性があり、今後、医農薬学、化学工業への貢献が期待できます。

<リケジョ(理系女子)が増えるとどのような利点があると思いますか?>
未だ男性主流の社会である科学の分野において、理系女子が増えることでこれまでとは異なる視点から物事を捉えることが可能になると思います。女性らしさを活かし、繊細なところまで追求していくことにより、日本の科学の  質の向上にも繋がります。また、理系女子の社会進出により、男女問わず研究の道を選ぶことができるようになり、子どもたちにとって将来の選択肢を増やすことが可能となります。

高山あかり(たかやま あかり)

”科学とは、最上級の暇つぶし”

出身地:  福島県南相馬市原町区
生年月日:1985年10月19日 (27歳)
出身大学:東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻 光電子固体物性研究室 卒
現所属: 2013年 4月~ 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (日本学術振興会 特別研究員(PD))
研究分野:光電子固体物性、表面、スピントロニクス

<研究歴>(受賞歴、論文掲載など)
【受賞歴】 日本学術振興会 第3回育志賞
【論文掲載】
・Phys. Rev. Lett. 106 (2011) 166401.
・Nano Letters 12 (2012) 1776. 他8編

<社会と研究の接点> 
パソコンやモバイル端末の高速化・省エネルギー化を実現する「スピントロニクス素子」開発の基礎となる電子スピンの状態を解明することに貢献

<研究内容> タイトル:世界最高分解能測定から見えた電子スピンの不思議な振る舞い
私たちの身の周りで多く使われている電子デバイスの次世代技術として、電子の自転である「スピン」を利用した電子素子「スピントロニクス」の開発が盛んに行われています。スピンはわずかな動力で制御できるので、さらに超高速・超小型・超低消費電力のデバイスが期待されていますが、電子スピンの観測自体非常に難しく、基本的な性質すら正確にはわかっていませんでした。

本研究では、電子スピンを高分解能で測定するため、検出効率を向上させたスピン分解光電子分光装置を建設し、これまでよりも1桁以上高い分解能を達成しました。この装置を用いて、重金属ビスマスの表面付近の電子スピンがどのような振る舞いをするのか研究しました。高分解能測定の結果、ビスマス表面の電子は、表面に平行な向きのスピンに加え、表面垂直方向のスピンを持つこと、さらに表面だけではなく界面でも同様のスピンが存在していることを見出しました。ビスマスの電子スピンは電場で制御ができるので、磁場でスピンを制御する現在の素子よりも、より高速で省電力のパソコンやモバイル端末の実現に大きく寄与すると期待されます。

<今後、日本に女性科学者が増えるために、どのようなサポート、施策が必要と思いますか?>
進路を決める高校生の時期までに、科学者という仕事が何かということが伝わっていないのではないかと思います。研究者という職種は閉じた世界にあるため、どんなことをするのかわからないままでは、進路の選択肢にも      なり得ません。まずは研究者の魅力について説明する場や機会が必要だと思います。

2013年度 第8回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」―生命科学分野

野殿 英恵(のどの はなえ)

  ”科学とは、楽しみ”

出身地: 神奈川県川崎市高津区
生年月日:1982年6月12日 (31歳)
出身大学:慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科
発生・生殖生物学研究室
現所属: 2013年4月~ 慶應義塾大学 理工学部
研究分野:発生・生殖生物学研
究歴:(受賞歴、論文掲載など)
2009年〜2011年 日本学術振興会特別研究員DC2
2012年 日本学術振興会若手研究者ITPプログラム派遣(Oxford大学)
2013年 博士(理学)取得
【受賞歴】
・平成25年度 江上賞(日本動物学会、2013年)
・JSDB Travel Award(日本発生生物学会、2010年)
・文部科学省科学研究費特定領域研究「性分化機構の解明」主催
 第3回冬のワークショップポスター発表賞(2008年)
【論文掲載】
Molecular Reproduction and Development誌に筆頭著者論文2報
(2012年)他、共著論文2報(2007年、2013年)

<社会と研究の接点> 
生殖様式の転換や生殖様式と寿命の関係という生命の基本原理の理解に貢献

<研究内容>タイトル: プラナリアの生殖様式転換と寿命に関する研究 
生物の殖え方(生殖様式)には、自身のコピーを殖やす無性生殖と、受精を経て多様な子孫を産み出す有性生殖があります。多くの生物で環境や季節などに応じた生殖様式の転換が見られますが、これはより確実に次世代を 残すための生き物たちの戦略です。

本研究では、細かく切っても全身を再生できることで有名な水棲動物プラナリアを用いて生殖様式制御の謎に  迫っています。有性個体の多能性幹細胞を無性個体に移植し、生まれながらの生殖様式が幹細胞自体に決まっていること、すなわちバラバラにした有性個体の幹細胞から有性個体が作り上げられることを証明しました。加えて 生殖様式の季節転換の野外定点調査も行い、自然界での転換過程の分子生物学的な解析を進めています。また、有性生殖する生物には寿命がありますが、プラナリアの無性系統は体細胞分裂のみで存続しており寿命が無いと言われています。そこで、無性個体に有性個体を餌として与えると人為的に有性生殖を誘導できることを利用し、寿命や老化と生殖様式の関係についても研究を行っています。多能性幹細胞や生殖・寿命といった社会的関心が高い事象について、プラナリアを切り口に新たな理解を提供していきたいと思います。

<リケジョ(理系女子)が増えるとどのような利点があると思いますか?>
理系の学問や研究活動を通じて、事実を正しく捉え論理的に考える力を身につけた女性が、女性ならではの長所を活かして新たな視点や手法で科学技術のみならず様々な分野の課題にアプローチできるのが利点だと思います。

松嶋藻乃(まつしま あやの)

“科学とは、自分の人生を賭けて あまりあるもの”

出身地: 北海道札幌市
生年月日:1986年2月17日 (27歳)
出身大学:北海道大学 医学部
現所属: 2013年4月~ 北海道大学大学院 医学研究科 特任助教
研究分野:システム神経科学、神経生理学
研究歴:(受賞歴、論文掲載など)
【受賞歴】
平成17年   北海道大学 新渡戸賞
平成20年   北海道大学医学部 第4回音羽賞
平成21年  日本学生支援機構 優秀学生顕彰事業 優秀賞
平成22〜23年度 財団法人帝人奨学会 帝人久村奨学生
平成24年包括型脳科学推進支援ネットワーク若手優秀発表賞
平成24年度~25年度 日本学術振興会 特別研究員 DC2
【論文】
・Miyazaki T, Yamasaki M, Uchigashima M, Matsushima A, Watanabe M.
Eur J Neurosci. 2011 Jan;33(1):82-94.
・Matsushima A and Tanaka M
 J Cogn Neurosci, 2012 Oct; 24(10):2043-2056.
・Matsushima A and Tanaka M
 NeuroReport, 2013 Jan; 24(2):73-78.
・Matsushima A and Tanaka M
 Cereb Cortex, published online 2013 Jan 24

<社会と研究の接点> 
精神・神経疾患の新たな診断法・治療法につながる脳内情報処理機構の解明に貢献

<研究内容> タイトル:前頭連合野による注意の制御      
私たちの周りには、たくさんの光や音があふれています。それらの情報は、目や耳を通して脳に送られていますが、 脳はそのすべてを処理しきれません。実際、目に入っていても気がつかないことはよくありますが、大事で興味ある ことには大抵気がつきます。このように大事なものを優先的に処理して、それ以外を無視する機能には前頭連合野が 深く関わっていますが、その神経メカニズムは明らかにされていません。

そこで、実験動物を用いた研究を行いました。2つの視覚刺激を動かして、1つだけに注意を向けているときの     前頭連合野の活動を調べたところ、注意を向けた刺激に反応するニューロンとは別に、無視しなければいけない方の刺激に反応するニューロンがあることを発見しました。これは、前頭連合野が、大事な物を見逃さないよう強調するだけでなく、関係のない物に惑わされないよう、その処理を積極的に抑制する働きかけをしていることを示唆して  います。このように脳の情報処理を明らかにすることで、統合失調症やADHD(注意欠陥・多動性障害)をはじめと  した様々な精神神経疾患の症状がどうして生じるのか生物学的に説明し、新しい診断法や治療法の開発に役立つと期待されています。

<先進国の中で一番女性科学者の比率が少ないといわれる日本の現状についてどう思いますか?>
女性を特別扱いにするのではなく、男性と同等のチャンスを与えること、また、女性自身の意識を変えること、社会的 な理由で阻まれることを失くすことで、日本社会において互角にたたかえる女性が自然に輩出されることを望みます。

リケジョ(理系女子)の活躍を支援する「リケジョミクス 3本の矢」を発表!
~リケジョ増加による経済波及効果は約2,800億円!?~

アベノミクスの成長戦略のひとつとして「女性の活躍促進」が提唱され、女性の働きやすい環境整理が期待される今、日本における“リケジョ”を増やす意義を広く発信すべく「リケジョミクス 3本の矢」を発表し、森まさこ女性活力・内閣府特命担当大臣に提出しました。

「リケジョミクス 3本の矢」は、国の政策として掲げられている理系の女性研究者の割合が研究者全体の30%に達成するために、現役リケジョの声を反映した施策を提案しています。また、関西大学 宮本勝浩教授の協力のもと、リケジョが30%に増加することで日本にもたらす経済効果が約2,800億円となる算出結果も示しています。

日本ロレアルは「リケジョミクス 3本の矢」をはじめ、今後も様々な啓発活動を通して、日本の理系女子の活躍の場がより一層広がるよう、長期的視野に立って支援していきます。

「リケジョミクス 3本の矢」~経済効果約2,800億円!~
1 全国の教育機関の理系各学部に必ず1名以上の女性教授を登用!
アベノミクスの成長戦略では、 2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標を達成するべく、上場企業に対して「役員に一人は女性を登用していただきたい」と呼びかけています。 教育機関の理系学部では、指導的な立場の女性の割合の低さは特に顕著に表れており、このことが 女性科学者のロールモデルが少ないという大きな課題につながっています。多様性の実現に向けて、全国の教育機関の理系各学部に1名以上の女性教授を登用することが重要だと考えます。
<施策案> 理系各学部における女性教員の割合提示の義務化 

2 女性に優しい研究室作り!
研究者は夜遅くまで研究をしていることが多いため、また男性の割合が多い環境にあるため、整理整頓にまで手が回らないことが多く見受けられます。女性も気持ちよく研究に集中できるよう、化粧室の整備をはじめ、キレイで居心地のよい研究室作りを進めることが必要だと考えます。
<施策案> 「女性に優しい研究室大賞」の制定

3 大学・大学院の学生生活や研究環境を知る機会を創出! 
進路を決める高校生の頃までに、理系の良さや科学者の仕事について知る機会が少ないのが現状です。リケジョを対象にした調査においても、後進の育成のためには「理系女子の大学・大学院生活や研究生活を知る機会を作る」と回答した人が67.2%(※)という結果も出ています。早くから科学者  という仕事の魅力を次世代に発信していくことが重要だと考えます。
※日本ロレアル株式会社 理系女子学生の満足度に関する意識調査より
<施策案> 大学・企業へのリケジョ参観日の促進